Who is King ? | 02


マス向けになることを嫌う人がいると思うんだけど、俺は取り上げられてもその人が変わらなければ一緒だと思ってる(HIRO)


--ここでインタビューに、STREET KINGSにも楽曲を提供しているSNG(GROOVIN/SLASH、FTHEB)も合流。


SNG:HIROさんとしてはこのイベントで勝ち上がっていくことに対して、ダンサーにこう思ってほしいなという部分はありますか?

HIRO:今までのアンダーグラウンドという位置付けを考えると、マス向けになることを嫌う人がいると思うんだけど、俺は取り上げられてもその人が変わらなければ一緒だと思っているんだよね。なので、これをより多くの人に知ってもらうためにはマスに広げていかなければいけないと思っています。マスに広がるのが嫌だと思っていると認知度はどうしても上がらない。そこでジレンマがあるのは分かるんだけど、ダンサーはそこの垣根を自分で取って場を広げていかなきゃいけないと思うんだよね。僕らみたいに経験が長くてキャリアがある人たちが、若い子たちにそういう場を作ってあげないといけないと思っています。



--今までの話を聞いて、ダンスに対する情熱がすごく伝わってきました。その情熱を持つに至ったきっかけや原体験のようなものはあるのですか?


HIRO:今のダンスって健全なイメージが根付いていると思っていて、でも自分のストリートダンサーとして根底にあるのはHIPHOPやストリートダンスのカルチャーで、なにより反骨心みたいなもの。今の認められている、なんて言うのかな〜、ある意味ぬるいっていうか、そういう中で認められても経験値もスキルもハングリーさも育たないと思う。僕は常に反骨精神を持てるターゲットを探していて、なにより一つ一つの出来事をすべて反骨精神に変えています。それはきっとみんな持っていて、出すか出さないかの問題。俺はそれを露骨に出したいタイプ。(笑)

今重要なベクトルは、ダンスの中にいる人たちではなく外に向けてのベクトルです。ストリートダンスとしての核は変えません。イベントもバトルならバトルだし。核は変えずに、もっとダンサーがよりチャンスを掴める世の中になってほしいと思っています。


--今回世界初の取り組みだと思うのですが、オリジナル音源を使うことに至ったのはなぜですか?


HIRO:一番は、ダンスと音楽の関係は密接だから、個人的にそこをリスペクトしたいなと。権利の問題とかがあってダンサーって音楽を公に自由に使えないんだよね。だからどうしても人のものを借りてやっている感が拭えない。そこの制約というか、仕組みを打破するきっかけを作りたいと思ったんです。なので今回は無理を言ってオリジナル音源にこだわりました。


--今回音源にスローとファーストがあると思うのですが、そのあたりの流れる音楽について簡単にご説明頂いてもよろしいですか?


HIRO:はい。スローは、いわゆるBPMと言われている速さの中でHIPHOPやFUNKなどのスピード感のもの、逆にファーストはHOUSEやBREAKBEATSなどの体感的に速いものです。ダンスのジャンルがはっきり分かれていることは僕も一人のダンサーとしてリスペクトしています。足さばきを武器にしたいHOUSEダンサーに遅い曲は合わないとか、重たいグルーヴを出したいHIPHOPダンサーに速い曲が合わないってことがあると思う。でもスローとファーストって位置付けだと、それぞれが両方を試されるので、ダンサーにとってフェアな状況というか、どちらも踊りこなせることが本当の意味でのフリースタイルダンサーかなと思っています。


でも僕フリースタイルバトルってすごく苦手で、出たくないってずっと言い張ってます(笑)不得意なものを踊らなきゃいけないから、恥をさらしにいくようなものな気がして。でも今回のこのシステムって、スローとファストのBPMが定義されているので、その範囲からは外れないっていう一つの安心感につながると思っています。更にバトルで使用する楽曲をエントリーダンサーに事前に聴かせられるようにしようとしています。それによって予習ができるので、より安心感につながるし、できる限り不得意なところを緩和させてあげたいなと思っています。


--SNGさんにお伺いしたいのですが、オリジナルのトラックを作るという構想をHIROさんから聞いたときに、どのように感じましたか?


SNG:そうですね、最初は企画段階のときに説明を受けたので漠然としかイメージできていなかったのですが、ダンサーにとって今までの既存のイベントとは全く違うものになるだろうなと感覚的に思いましたね。新しいものが生まれだすな、っていう。


--曲作りで意識されていることはありますか?


SNG:ダンスの音楽って、歌う楽曲や単純に聴く楽曲とはニュアンスが違くて、作るときは自分で踊りながら考えますね。「自分で踊れるか」のフィルターがあるので踊れない作曲家さんよりは自然に作れているとは思います。



--HIROさんが、今回曲をお願いするトラックメーカーさんを選出する際に、どのような観点で決められたのですか?


HIRO:やっぱり一番は、はじめての試みなので楽曲の構成力やクオリティというよりも、ダンサー目線になれるかということを重視して決めさせてもらいました。バトルって制限時間があって、曲の「おいしい」部分を集約しなければならないので、ダンスする人をイメージしながら作ってくれるようなトラックメーカーに依頼しました。

例えば、WICKETというアメリカのレジェンドb-boy、IVANというイタリアのThe Sleepers RecordZというレーベルをしている方、あとTAKUYA(SYMBOL-ISM)のYYGRECにもお願いしました。いろんな切り口から曲を集めていけるようにしています。今後もこの企画に賛同してくれて、トラックメークしてくれる人は時期を問わずにどんどん楽曲を集めにいきたいと思います。



IVAN (The Sleepers RecordZ)



TAKUYA (SYMBOL-ISM / yygrec)



--ここから踊り継がれていくようなダンサーの新しいクラシックが生まれてくるといいですよね。


HIRO:そうですね。そしてできればトラックメーカーの人にわがままを言いたいです。例えば優勝した人には使用した楽曲の中から一番気に入ったものを選んでもらって、その人のテーマ曲にしてあげてしまうみたいな。優勝賞金は曲です、のように。ダンスもトラックメークの世界もどちらもシビアなので、お互いの相乗効果として考えたときに損得ではなくやりがいとして捉えて欲しくて。普段のオーダーされている楽曲よりももっと挑戦できるし、トラックメーカーの人にも実験的な場として使ってほしいですね。



--SNGさんはトラックメーカー側からとして、ダンサー側にこういう風に仕掛けていきたいというのはありますか?


SNG:最近オリジナル楽曲を作りたいと言っているダンサーは増えていて、実際オファーを頂く機会も増えてきています。それがスタンダードになっていくようにしていけたらいいなと思うし、一緒に作る仲間とかができるようになったら面白いなと思いますね。



--例えばダンサーの映像とセットにしたら伝わり方とかも違うと思うのですが、そのあたりの可能性についてどう感じますか?


SNG:やっぱり自分の音楽は踊ってもらって出来上がる感じがするので、映像とセットになるというのは一番の理想かもしれないですね。

HIRO:今のところダンスの尺に合わせてショートトラックを基準に集めているんだけど、AWAで配信された後反響の大きかったトラックに関してゆくゆくは一曲として仕上げられたらと思っています。あと、世界とかと一緒にSHINGOがFTHEBっていうCREWを組んでるよね。

SNG:はい、ダンサーとしても一回だけTAISUKEの代わりに踊りました(笑) 今までのショーは全部僕が作ってます。一人一人のソロの個性と全体で踊る時の特徴を引き出すことが大切だと思っています。そのあたりも分かり合えるメンバーなのでやりやすいですね。


--ここは誰々のソロ、とかもイメージして作られているんですか?


SNG:はい、全てイメージして作っています。ここの音変えてっていう要望とかもありますよ。最初のころは自分も慣れていなかったので、メンバーの好きな音のニュアンスとかが分からなくて、相談して作っていました。今はもうないですが(笑)



--ちなみに曲を作り始めたのは何がきっかけなのですか?


SNG:僕はフジロックでみたケミカルブラザーズです。単純にああいう大きいステージで、自分たちが作った楽曲で一時間とかライブしたいなって思ったのがきっかけですね。あと映像でダンサーを使ってたんですよ。こんな使い方ができるんだって衝撃を受けて、そこからそれができたらなって思いました。


--今後、ケミカルとかにも曲を提供してほしいですね。


HIRO:ほんとそうですね。有名・無名に関わらず、ダンスってキーワードで繋がっている人はポジションも立場も関係ないと思っていて、そういう理想に近づけば、アンダーグラウンドもメジャーも関係なくなると思います。今後も有名・無名に関わらずこのプロジェクトに賛同してくれる人たちには機会を活かしてほしいし、僕らもオファーしたいと思っているので、この記事を読んでいる人で、もしいらっしゃればぜひ提供していただきたいです。



--コンペなどの企画で募集するとかでしょうか?


HIRO:もちろんそれもアイディアの中にあります。今回は時間的にも難しかったんでできなかったんですけど、今後はそのような企画を立てていき、より多くの人たちにきっかけを作っていきたいですね。


--他のトラックメーカーがどんな曲を作ってるのかとかは気になりますか?


SNG:もちろん気になりますね。自分よりいい曲作られたくないんで。(笑)


--そっちのバトルもあるんですね。


SNG:そうですね、ありますね。やっぱり一番いい曲と言われたいんで。



HIRO:今回Vol.0としたのも、Vol.1までにより多くのトラックを集めることで選曲の幅を広げて、大変だけどそれをスタンダードにしたい。また更にトラックメーカーとダンサーの新しい広がりを作っていけたらな、と思っています。





--激戦必至が予想される今回のSTREET KINGS。一体誰がKINGの座を勝ち取るのだろうか。

STREET KINGSをきっかけにアンダーグラウンドカルチャーとしてのダンスを世に広めることができれば、「生業=ダンサー」という新しい形が確立されるかもしれない。今後の展開にこれからも注目していきたい。




HIRO(ALMA)

SNG(GROOVIN/SLASH、FTHEB)

Photo by AYATO




▼This is Dancer's Classics vol.0" Selected by STREET KINGS

8/14(日)STREET KINGS vol.0開催を記念したDancer's Classics特集。坂見誠二,BOBBY,PEET,KAZUHIRO,AKANE,HIRO,TWIGGZ, OBA,SNG,世界,中務裕太の11名が選ぶ踊り継がれる名曲集。全32曲のプレイリスト。


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