媚びるわけではない。俺たちがやっていることをそのまんまで認めてもらうきっかけがSTREET KINGS(HIRO)
「バトル音源について」
HIRO:じゃあもう一つの新しい試みとして、音、楽曲について。今後俺らが楽曲に対してどうアプローチしていくべきかってことで、今回トラックメーカーの人たちにお願いしたんですけど、ざっくばらんにどうでしたか?踊ってみた感じ、聴いてみた感じ。
世界:僕はHIPHOPのバトルに出ることが多いので速い曲も遅い曲もかかるので、打ち込みもラップの曲もかかるってところで、今回打ち込み音が多くて踊りやすかったです。
※STREET KINGSのバトル音源は、全て新しいオリジナル楽曲。音楽配信サービス「AWA」にて今後配信予定。
YOSHIE:私は人生でインストで踊ることがほぼ無いくらい歌が好きで。聴いているのもそうだしそういうのばっかショーで使っているから、最初の時点で「おうっ」ってなったけど。でもチャレンジしたくて、いざ出て行ったら、ループしている中で自分の中で何かが変わっていって。自分でリズムを作ったりする醍醐味であったり、素晴らしい曲の展開の中でそれと一緒にジョイントするってのも楽しいけど、それはそれでなぞっている部分もあって。そういうループとかインストの楽しみ方とかを、「あれ?見つけちゃった?」みたいな、そういう風に思えた。意外とその場で何がかかるか分からないっていう方が自分にはちょっと合っているから、出たとこ勝負で「今を感じる!フォー!」みたいな感覚が本当に好きで、改めてその感覚に曲がさせてくれた。有名な曲がかかるとまたこの曲かって私は感じちゃうところもあるから。今回は新鮮だし発見があった。ちょっと最近インストで練習してる。
HIRO:TAKUYAには今回HOUSEの方の楽曲のバランスを見てもらいつつ依頼をしたんだけど、そういう目線もありきで全体的にどうだった?
TAKUYA:全体の音源のクオリティはまだまだ全然上げられるんじゃないですか。ほんとにリリースできるレベルくらいの音を作っていかなきゃいけないし、そういう人脈を広げていかなきゃいけないと思うんすよね。多分それがバトルを面白くする大きな要因だし。ただこの試み自体はバトルとしてもさっきも言ったけど、公平性みたいなところですごい出ますよね。知っている名曲がかかってそれでそっちが有利になるとかっていうのもバトルの面白さの一つだけど、それが無くなる面白さ。だから本人の中にあるクリエイティビティがすげえ引き出されるし、自分でリズムを構築していく部分、歌を足していくようにダンスを足していく、一つ楽器を足すようにダンスを足していくみたいなことをやる。今まで、知っている曲に沿う手法の方がみんなも湧きやすいけど、そうじゃないダンサーとしての新しい力みたいなものを問われているから、結構リアルなバトルになる。それで更に観客も巻き込む、審査員も巻き込む、自分も気持ち良く、ってところまでいくと一個レベルの高いことをしていると思うんすよね。そういう意味では素晴らしいし、すごい面白いと思いますよ。
HIRO:やっぱり「生音のグルーヴがあって、LOCKの踊り方があって、ファンキーです」っていうのが一番ベストなのは分かるんだけど。じゃあ打ち込みだからグルーヴが無いのかって言ったらそんなことなくて。音が踊らせてくれるのはもちろんなんだけど、ファンキーさを表現するのはその人だから。じゃあいつも同じ音じゃないとその踊りができないのかってなったら、ダンサーとしての可能性はやっぱり低くなっちゃうかなっていう。
SLOWとFAST...(※2)も体感だとほとんど分からないんだけど、実際にBPMで測ると90と120ではだいぶ違う。でもHOUSEでいう四つ打ちじゃなくて、FUNKっぽい打ち込みで120くらいだと体感的に速くは感じないんだよね。だから俺は最終的にSLOWとFASTでカテゴリーとしては分けたけど、やっぱり質感が違くて、その速さだからこそ出るグルーヴがある。そういうところをうまく踊りこなせるようなダンサーが上がれるっていう。
次回はどこまでをSLOWとし、どこまでをFASTにするかってことを考えて、より分かりやすいようにお願いしようと思っていて。実は今110を境目にしていて、今回やって分かったことなんだけど、音楽性が高い曲って110に近いのが多くてどっちにも捉えられる速さなんだよね。まだ確定してないから全然分からないけど、トーナメントに上がったら三回踊ってもらって110くらいのMIDDLEでも踊ってもらおうかなって。
世界:単純に疲れますね(笑)でも誰かも舞台裏で「これ意外とSLOWとFASTの違い無いよね」と言っていました。
TAKUYA:どっちかに極端にふるってのは面白いかもしれないですね。真ん中とすごい遅い曲とか、真ん中と速い曲とか。三回はさすがに疲れると思うんすよね。どっちかに寄せるのはありだと思います。
(※2)SLOWとFAST...ダンスのスタイルによって分かれているジャンルの違いは、ダンスをしていない人には分かりにくい。そこでSTREET KINGSでは、楽曲をBPM(速さ)でSLOWとFASTの2スタイルに分けて、バトル音源に使用するシステムを採用している。
(YOSHIE vs Hong10 STREET KINGS vol.0 SEMI-FINALより)
HIRO:でもほんとに今回準備段階で時間を取れなかったので、一応みんなには送ったんだけど、ギリギリだったから全部は聴けなかったと思う。今回使った曲も選曲リストに入るってことになると、これからみんなも聴く時間があると思うから「この曲で絶対踊りたくない」みたいなのもあると思うんだよ。そういう曲もありますよって心構えと、結構かっこいいじゃんってなる曲もあるんだってことを知って欲しくて。実際踊る時は結局どれがかかるか分からないわけだけど、事前にちょっとだけでもこういう曲があるんだって知ってもらえれば一瞬の安心感があると思う。これからそれを作っていきたいと思ってるね。そうすることで二回目以降また違う効果が出てくるかなと思っている。聴いてれば聴いてるほど曲の展開とか打ち込みのパターンが分かってきて、もしかしたら踊りがもっとはめ込めるかもしれないし、たまたま気に入ってる曲が自分が踊るタイミングでかかるかもしれないし。そういう事前の準備ができることも、よりアスリートっぽいというか必要なことかもしれないよね。
「生中継について」
HIRO:生中継についてはどうですか?
TAKUYA:生中継もそうですけど、載せ場所が今回AbemaTVだから、まあ世界とかも関わっていて注目度も高まってっていうところで、あれだけの人が見てくれたこと。リアルタイムなのか再放送なのかはわからないけど、少なからず生であれだけの人が見てくれたって意味では、相当画期的だったんじゃないですかね。しかも臨場感あるから面白いしね。生の方がね。今やってるから結果はまだ分からないですからね。そういう意味ではやっぱりみんなドキドキしながら見れたっていう。
HIRO:収録にした方がカメラワークとかもより完成度を上げることができると思うんだけど、結果が先に分かっちゃうよりもリアルタイムでどっちが勝つか分からないっていうドキドキ感があるっていうのは生中継の意味のある部分だと思っていて。ただ生中継だからこそ撮る方もものすごく難しくて、何が起こるか本当に分からないから。
日本の従来のダンスイベントってすごくきっちりオーガナイズされてて、あんまりバタバタ感がないまま、うまく進んでいくんだけど。でもなんかそのリアル感というか、そういう意味では今回の生中継って面白かったのかなって。
YOSHIE:今回の放送を見てくれた人が、「絶対2月行く!」って言ってましたもん。
(世界 vs TAISUKE STREET KINGS vol.0 トーナメント3回戦より)
「次回のvol.1に向けて」
HIRO:じゃあそろそろ最後になりますが、次回以降もっとこうなったらなっていう部分で何かありますか?
世界:出る側の人間としては、更に盛り上がってほしいっていうところなんですけど、自分も作っていく側としては次がvol.1なので、今ここで出たアイディアを含めこれからたくさん会議をしたりして改善していきたい。そうすればより出てくれる人も増えると思いますし、生中継で見ている人たちにも面白い工夫ができると思うので。できることがあれば僕も頑張ります。
音楽の面でももっともっと改善していかなきゃいけないと思うし、今は18歳以上ですけどもしかしたらもっと下がるかもしれない。いろんな方向性があると思うので、そういう派生ができたら面白いなと思いますね。
YOSHIE:私が気になっているのは、次のvol.1のシードが16人で、残りの16人をどういう風に予選していくのかってところかな。
HIRO:あえてシードを作るというのは、シード権にメリットがあるというよりは逆に、シードになった人はSTREET KINGSを盛り上げていくためのシード権というか。16人に入った人は俺の中でプロだから。そこを目指してくる人たちもいるしチャレンジャー精神に火がつくし、追われるプレッシャーもあるからドラマが生まれると思う。チャレンジャーが「倒してやろう」って思う目標になってもらうためというか。従来のバトルだと上に上がるほど注目されるんだけど、俺的にはベスト32が一番バチバチしてほしい。次回の初戦の16試合全部に勝者と挑戦者という位置付けがあるから、見ている人の面白さにもつながると思うし、新たな考え方かなと。
TAKUYA:僕はSTREET KINGSっていうものが、ダンサーの新しい指針になるために、もっと細かいブラッシュアップをしなければいけないなと。解説もそうだし、広い人たちにダンサーがすごい、かっこいい、難易度が高いことをやっている、思ったより本気だぞってことを伝えられるきっかけになれるんじゃないかって今回を通して思った。今喋っている言葉とかもそうだけど、そこを丁寧にブラッシュアップしていかなきゃと思っていますね。どうやったら巻き込めるか、ダンサーだけでストイックになりすぎてもだめで、それはステージの上だけで良くて。その他の部分をどう面白く見せていくか、嘘の演出はいらないけど、どうやって盛り上げていくかってところを。この最アンダーグラウンドな立ち位置の俺が言う意見じゃないけど(笑)
こういう立場の人間だからこそ言うけど、みんな250万取るだけじゃ勿体ないと思う。それをきっかけにダンサーが社会的に認められたり、かっこいい存在として出ていくための舞台に成長させられたら、「HIROくんすげえな」っていうね。やりやがったなと。
全員:(笑)
HIRO:俺たちの上の先輩たちが築き上げてきてくれたものを、これから下の子たちが担っていく。だけどやっぱり今のダンスの影響力を、作ったりキープしたりしているのはここにいるメンバーだったり、俺たちが知っている中のいろんな人たち。そういう人たちがこのSTREET KINGSという場をきっかけに世に認知されてほしい。だからと言って媚びるわけではなく、俺たちがやっていることをそのまんまで認めてもらうきっかけ。ほんとにタイミングときっかけだと思っていて、俺たちがやっているダンス自体も、ビジネスのフォーマットも、コミュニティの作り方も、すごい参考になるところがいっぱいあると思っている。ただそれを世の中の人に形を変えて知ってもらっても意味ないなと思っていて。俺たちの中の全体的なレベルが上がっていくと本当に水準が上がっていって、いろんなこと主張できるようになるかなって。
TAKUYA:いろんなプロが生まれなきゃなんないですもんね。曲作るとか、しゃべるとか、ダンサーのダンス以外のレベルを上げていかないと一般の人には伝わらないと思いますよね。
HIRO:あとはちゃんと結果を残して、そこから本当の意味でのダンスのカリスマとして憧れの存在になるような人を輩出したいから、そういう風にイベント自体が成長していくといいかなと思いますね。
今回のカリスマであるYOSHIEさん、賞金の使い道は?
世界:パソコンでしょ?YOSHIEさん。
YOSHIE:(笑) 考えてないけど、ダンスで取った賞金で250万なんてないじゃないですか。想像もしていなかった金額なので、どうにかダンスに活かせる使い方を考えなとバチ当たるなと思いました。
HIRO:お金の金額は本当の価値じゃないと思っていて、お金の対価ってあるけど全ての物事がそれで判断されるわけじゃない。でもやっぱりお金の対価って信用だったり積み重ねに値するものだから、あの中で勝ち上がることって本当はもっと価値のあることかもしれない。今まで積み重ねてきた時間に比べたらさ、それはいくらって計算できないんだけど、それのご褒美だと思って自分に使えばいいと思うんすよ。全然。
(YOSHIE STREET KINGS vol.0 表彰式より)
世界:結構いろんなことできますよね。とりあえず、ご馳走様です(笑)
HIRO:世界はどう?
世界:ちょうどキッズダンサーと呼ばれる一番初めの世代で、僕もTAISUKEもいろいろ担っていかなきゃいけないと思っています。あと、単純に僕ら世代の人が少なかったので、もっと出てくれたらと願っています。
YOSHIE:普段ダンスで食べているけど、「ダンス=お金」みたいに執着はしていなくて。でも今回、次はいくらを賭けるのかみたいなのが具体的に分かったから、ファイトマネーのリアリティみたいなものがあって良かったと思いますね。
TAKUYA:逆にダンサーそういうの足んないと思いますよ。ラップだったらマイク一本でのし上がってやるぜ、稼いでやるぜみたいに堂々と言うけど、ダンサーってそういうのに後ろめたさみたいなの感じているのかな?がっつり稼いでやるぜみたいなことを堂々と言うやつ出てきた方がいいと思う。
HIRO:俺は作る側としては、こういうチャンスの場がある間に、本当にもっと多くの人に使ってほしい。これに乗っかって、味わってほしいしこの舞台をうまく使ってほしい、ダンサー次第だから。いつか出ますよ、僕も。
まあ二回目以降も楽しみにしているので、お二人もスケジュール合えばぜひ、シードなんで。挑戦者を待ち受けてもらって、バッタバッタなぎ倒してもらいたいね。俺らもやることやるんで、ぜひ今後ともよろしくお願いします。
開催前のインタビューでHIROは語っていた。
「STREET KINGSを通してダンサーの"次の形"をつくりたい」
エントリー料2万円、賞金総額500万円、新ジャッジシステム、バトル用オリジナル音源、生中継、、
これら新しい取組づくしのVol.0を通して、"次の形"の道標が見えてきたことは間違いない。
-Who is next King?-
更に進化するであろう「STREET KINGS vol.1」が早くも待ち遠しい。
▼STREET KINGS ORIGINAL PLAYLIST
▼STREET KINGS OFFICIAL
▼STREET KINGS vol.0を振り返る(short ver.)
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