田舎へ帰ろう

足を踏み入れた瞬間に「あ、懐かしい」と思うことがある。

それが、初めて訪れた土地であったり、ましてや海外でも起こるってんだから、人間は不思議で都合がいい。

そして音楽好きな僕らは、自分と縁と所縁もない国の御当地ソングですら、涙が溢れ出てしまうほどのサウダージを味わえる幸せ者たち。郷愁の想いは、国境や環境を超えて僕らの心に備わっているのだ。

今回のプレイリストは、都会の喧騒を少し離れて、ふるさとの時間に戻す8曲の帰郷旅行。思い描く風景は、貴方次第。

"田舎へ帰ろう" by Yacheemi on AWA


1. San Andreas Fault / Natalie Merchant
昨年リリースから20周年を記念して再録もされたソロ処女作『Tigerlily』からの名曲。
冒頭のハミングで、白飯が食える貴方はマイ・ベスト・フレンド。
大都会の残酷さを静かに諭し、夢破れた若者を包み込む彼女の歌は寛大に優しく響く。

2. Chambre Avec Vue / Henri Salvador
説明不要フランスが誇る人間国宝、アンリ・サルヴァドール御代。ミリオンセラーとなった同名アルバム録音時83歳とはまるで思えないくらい、瑞々しい声で紡ぐ人生のうた。タイトルは直訳すると「眺めの良い部屋」。
ふるさとに向かう車窓から覗く景色は懐かしくもあり、新鮮でもある。遺作となった『Reverence』も大好きな作品だ。

3. Po' Folks / Nappy Roots feat. Anthony Hamilton
ケンタッキー州出身のヒップホップ・ポッセが放った2002年のヒット曲。貧乏生活(='po = poor)を牧歌的に歌った、力強くも呑気な前向きソング。アンソニー・ハミルトンによる塩辛ヴォーカルも最高だ。グループはインディペンデントに活動中、昨年には6枚目のアルバムをリリースしている。

4. Georgia / Field Mob feat. Ludacris
引き続き哀愁を誘う南部産ラップ。レイ・チャールズ「我が心のジョージア」をサンプリングし、さらには当時のレーベル・ボスでもあったリュダクリスをゲストに迎えた、完璧な布陣のATLクラシック。が、しかし数年後フィールド・モブとリュダは仲違い。そこは地元愛でも、どうにもならなかった。

5. レッツすいかどろぼう / Crystal Kay
続いていまや正統派ポップ・スターとして活躍するクリケイが14歳(!)のときに発表した一枚目からの名珍曲。
ある種ジブリ的とも言えるメロディーと、まだ原石のままのクリスタル・ボイス。すいかどろぼうの経験はないけれど、なんとも奇妙な至福感に包まれてしまうことは必至だ。

6. Love Scene / UA
今月に新作『Japo』を発表したUA。そのキャリアを通じて、より根源的な「うた」に向き合っていく彼女だが、ヴォーカリストとしての魅力がポップに結実した『Golden Green』は、個人的にもフェイバリット。
後半の「そんな日には ローズマリーとタイムが喜ぶ シチューにして」というラインも素敵すぎる。同作には本プレイリスト1曲目のナタリーのカヴァーもあり、そちらも必聴。

7. ピリカ / 喜納昌吉 & チャンプルーズ
40年以上にわたりウチナーの心を歌ってきた音楽活動家の喜納氏。無論『花』以外にも、自然と日本人の琴線に触れる楽曲は沢山ある。深い呼吸に、見上げた月夜。世の理に想いを、馳せる時間も時には必要だ。
タイトルはアイヌ語で「美しい」の意。

8. Felicidade / Seu Jorge
生まれ変わったらなりたいこんな声ランキング暫定1位に君臨する、大好きなブラジルのベテランアーティスト、セウ・ジョルジ(再来日熱望!)で里帰りの旅は幕締め。フェリシダージ(ポルトガル語で「幸せ」)を噛み締めながら、新しい旅路を祝そう。また、すぐ帰ってくるね。行ってきます!

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